資本フロー観測日誌 #004|「デフレ・マインド」の剥離と、資本効率という新重力

構造変化と夜明け


2026/02/20


■ 資本フロー・スナップショット(午前9時)

  • ドル円: 155.11
  • 米10年金利: 4.075%
  • 日本10年金利: 2.123%
  • 日経平均: 56,820円

一言総括: 資本は「過去の常識」を捨て、日本の「稼ぐ力」と「財政の拡張性」を同時に織り込み始めています。円安と金利上昇が共存する、構造転換の真っ只中です。


① 今日のニュース要点

  • 高市政権のアクセル: 消費税減税を含む「責任ある積極財政」を巡り、IMFの懸念を押し切る構え。市場はこれを「デフレ脱却への本気度」と解釈。
  • 日本株の質的変化: 上場企業が5年連続の最高益見通し。AI需要に加え、非中核事業売却などの「資本効率改革(ROE改善)」が実を結んでいます。
  • 技術の社会実装: iPS細胞による心筋・パーキンソン病治療の早期承認。日本が「研究」から「商業化」のフェーズへ移行した象徴的な出来事です。
  • 対米投資第2弾: 85兆円規模の投融資が次世代原発へ。米国のデータセンター需要を取り込みつつ、日米同盟を経済面から再定義。
  • 地政学のノイズ: トランプ政権によるイランへの10日以内の「合意」要求。原油価格の上昇圧力が、インフレ再燃の火種として燻ります。

② 定量で見る

  • 金利差と通貨: 日米金利差(政策金利)は依然として4%近い水準にありますが、為替は155円台で足踏み。単なる金利差取引(キャリー)から、日本の経常収支構造や地政学リスクプレミアムを反映した動きにシフトしています。
  • 米10年金利の示唆: 4%台での高止まりは、米国の「強すぎる経済」と、FRBの独立性を巡る政治的圧力を反映。世界の資本にとっての「無リスク資産の基準」が揺らぎ、リスクプレミアムが乗りやすくなっています。
  • 日本10年金利の示唆: 2.1%突破は、もはや異常事態ではなく「新常態」です。海外勢が日本国債を買い越す一方で、国内勢が売り越すというねじれは、外部から見た「日本の正常化」への期待の表れと言えます。

③ 定性で見る構造

「安全保障」と「時間軸」の二軸で整理すると、現在の資本移動がクリアに見えます。

  • 安全保障としての資本投下: 次世代原発やiPS細胞への投資は、単なる利益追求ではなく、エネルギー・医療の自給率向上という「経済安全保障」の文脈です。国家がリスクを共有する形で、民間資本が呼び込まれています。
  • 時間軸の逆転: かつての日本企業は「3ヶ月の決算」に追われていましたが、現在は「10年単位の構造改革(事業売却と再配置)」を進めています。この長期的な時間軸へのシフトを、外国人投資家は「ROEの持続的向上」として高く評価しています。

④ 資本フローの翻訳(総合)

本日は金曜日。一週間の総括として、通貨、金利、株式の連動性を紐解きます。

今、起きているのは「日本というアセットの再定義」です。

通貨(構造要因): 円安は単なる弱さではなく、エネルギーコスト高騰と、対外投資(85兆円の対米投資など)に伴う「資本流出」の結果でもあります。しかし、これは将来の配当・利息収入という「富の還流」の種まきでもあります。

金利(インフレ・財政): 日本の10年金利が2.1%を超えても株価が崩れないのは、金利上昇を「経済の体温上昇」とポジティブに捉える資本が増えたためです。高市政権の財政拡大が「悪性の金利上昇」を招くのか、それとも「デフレ完全脱却」への呼び水となるのか。市場は後者に賭け始めています。

株式(資本の到達点): 日経平均5万6千円台。これは「円安によるかさ上げ」を超え、企業が自律的に資本効率(ROE)を改善し始めたことへの報酬です。110兆円を超える企業の現預金が、賃上げと設備投資に向かい始めたことで、資本の循環速度が劇的に加速しています。


⑤ 経営者・個人事業主への示唆

「金利のある世界」は、もはや議論の段階を過ぎ、現実の経営環境となりました。 ここで求められるのは、「キャッシュの死蔵」に対する自己規律です。

  1. 資本効率の追求: 企業の最高益更新は、不採算事業を切り離した「集中と選択」の賜物です。個人事業であっても、低収益なタスクを捨て、高付加価値な領域にリソースを振る「新陳代謝」が不可欠です。
  2. 実質賃金プラス圏への対応: 労働力はさらに希少になります。賃上げを「コスト」と見るか、優秀な人材を確保するための「投資」と見るか。この視点の差が、数年後の事業継続性を左右します。

⑥ 私のスタンス

相場の上下に一喜一憂するフェーズは終わりました。今は「日本経済のOSが書き換わる瞬間」を観察する時期です。

私のスタンスは一貫して「予測より備え、ノイズより構造」です。
トランプ政権の動向や中東情勢といった突発的な揺らぎ(ボラティリティ)は避けられませんが、日本の企業が稼ぐ力を取り戻し、資本効率を意識し始めたという「底流」は変わりません。金利上昇を恐れるのではなく、それを受け入れた上で、いかに資本を効率的に回転させるか。その構造変化を静かに見守り、自身のポートフォリオに反映させる姿勢を維持します。

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