8月31日の東京市場で重要だったのは、日経平均株価が93円安だったことだけではありません。
朝方には一時1,573円安まで急落しながら、引けには下げ幅の大半を取り戻し、TOPIXはプラスで終えました。
朝に広がった「米国の利上げ警戒」が日本株を強く押し下げた一方、その影響は市場全体に同じ強さで残ったわけではありません。
今日は、なぜ朝に売られ、なぜ午後に戻ったのかを見ることで、日経平均の終値だけでは見えにくい東京市場の実像を整理します。
一時1573円安、それでも終値は93円安
31日の日経平均株価は、前週末比93円63銭安の66,311円93銭で取引を終えました。
一方、東証株価指数(TOPIX)は9.58ポイント高の4,156.29ポイント。二つの代表的な株価指数が、逆方向で一日を終えています。
ただし、今日の相場を理解するうえで重要なのは終値だけではありません。
日経平均は朝方、一時64,832円まで下落。前週末比では1,573円安、率にして約2.4%下げる場面がありました。
そこから午後にかけて買い戻しが入り、最終的には朝の安値から約1,480円分も下げ幅を縮めています。
朝方はAI・半導体関連株を中心に売りが広がりましたが、売りが一巡すると半導体株にも買い戻しが入りました。
引け時点では東証33業種のうち22業種が上昇し、下落は9業種。東証プライムでも値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回っています。
つまり、「日経平均が下がった=日本株全体が弱かった」とは言い切れない一日だったということです。
朝に半導体株を売らせたウォーシュ発言
朝方の売りの背景にあったのが、28日のジャクソンホール会議でのウォーシュFRB議長の発言です。
ウォーシュ議長は、FRBが物価指標として重視するPCE物価指数の前年比上昇率が3.7%と、2%の物価目標をなお大きく上回っていることを指摘しました。
そのうえで、現時点では物価安定を重視する必要性を強調しています。
市場ではこうした発言がタカ派的と受け止められ、米国の金利上昇が意識されました。
東京市場でも、アドバンテストや東京エレクトロンなど、金利上昇に敏感な値がさのAI・半導体関連株に売りが先行しました。
さらに、米国とイランの軍事的緊張が再び高まり、原油価格が上昇したことも、インフレへの警戒を強める材料になりました。
ただし、その売りが一日を通じて市場全体へ広がり続けたわけではありません。
午後になると半導体株の一部にも買い戻しが入り、朝方のショックから相場は大きく持ち直しました。
今日の値動きが示したのは、朝の「米利上げ警戒」が強烈だった一方、それだけで日本株全体の地合いが崩れたわけではなかった、ということです。
TOPIXと長期金利を見ると、別の景色が見える
その違いが最も分かりやすく表れたのが、日経平均とTOPIXです。
日経平均は、株価水準の高い「値がさ株」の影響を強く受ける価格加重型の指数です。
一方、TOPIXは時価総額を基準に構成されているため、市場全体の広がりを見るうえで重要な手掛かりになります。
今日は半導体の値がさ株が日経平均を大きく押し下げる一方、TOPIXは0.23%上昇しました。値上がり銘柄数も値下がり銘柄数を上回っています。
指数が逆方向を向く日は、日経平均だけで相場全体を判断しない。
これが今日の市場から得られる一つの重要な視点です。
もう一つ注目したいのが債券市場です。
新発10年国債利回りは一時2.950%まで上昇し、1996年10月以来、約29年10カ月ぶりの高水準を付けました。
15時台でも2.940%前後と、前週末から約0.015%ポイント、つまり1.5bp高い水準で推移しています。
1bpは0.01%ポイントです。
ただし、この金利上昇を「日銀の早期利上げ観測」だけで説明するのは適切ではありません。
ウォーシュ議長の発言を受けた米国金利上昇の波及に加え、日本の金融政策への思惑、インフレへの警戒など、複数の材料が重なっています。
為替も同じ方向には動きませんでした。
ドル円は東京市場で一時1ドル=160円20銭まで円安が進んだものの、15時時点では159円83銭。東京時間ではおおむね159円73銭〜160円20銭の範囲で推移しました。
株、金利、為替が一つの材料を軸に、きれいに同じ方向へ動いた日ではありません。
むしろ、市場ごとの反応にズレがあったこと自体が、今日の特徴でした。
朝刊から何が変わったのか
今朝のThe Kyo Timesでは、過去最大規模となった日米の円買い介入後もドル円が再び160円近くまで戻っていることを取り上げ、市場の関心が介入そのものから、日米の金融政策や金利差へ移りつつある可能性を整理しました。
その後、ベッセント米財務長官は最近の円相場について、かなり抑制された動きであり、介入時に問題となったような「無秩序な動き」ではないとの認識を示しています。
この発言は重要です。
ドル円が160円近くまで上昇したからといって、ただちに再び為替介入が行われるとは限らないことを示しているからです。
今日の債券市場では日本の10年国債利回りが2.95%まで上昇し、ドル円は160円付近で推移しました。
朝から夕方までの市場を通して見えてきたのは、「160円」という為替水準だけを見るのではなく、日米の金融政策と金利差を合わせて見る必要性が一段と高まっているということです。
今夜から9月1日、何を確認するか
今夜の米国市場でまず確認したいのは、ウォーシュ発言後に上昇した米国債利回りです。
米金利がさらに上昇するのか、それとも落ち着くのか。その動きによって、東京市場で午後に買い戻されたAI・半導体株への見方も変わってきます。
同時に、米国とイランの緊張がさらに高まり、原油価格の上昇が続くかも重要です。原油高が続けば、インフレ警戒を通じて金利上昇圧力につながる可能性があります。
そして次の重要な予定は、9月1日23時(日本時間)です。
米国では、
- 7月JOLTS求人件数
- 8月ISM製造業景気指数
- 7月建設支出
が相次いで発表されます。
特にJOLTSは米国の労働市場、ISM製造業景気指数は企業の景況感を見る重要な材料です。
ウォーシュFRB議長がインフレへの警戒を強く示しているなかで、米景気や雇用がどの程度の強さを保っているのかは、今後の金融政策を考えるうえで一段と重要になります。
もし米金利が再び大きく上昇し、米国の半導体株にも売りが続けば、今日朝方に見られた日本の値がさ株への圧力が翌営業日も意識される可能性があります。
反対に、米金利が落ち着き、半導体株が持ち直すなら、一時1,573円安まで広がった今日の下げは、市場全体の弱さというより、特定の大型株に集中したショックだったとの見方が強まる可能性があります。
今日のまとめ
今日の終値だけを見れば、「日経平均は93円安」です。
しかし一日の中身は、1,573円安まで売られた朝と、TOPIXがプラスまで戻した夕方では、まったく違う景色でした。
米国の利上げ警戒で半導体株が急落する一方、市場全体では値上がり銘柄の方が多く、長期金利は約30年ぶりの水準まで上昇。為替は160円付近で推移しました。
相場が大きく動いた日は、指数の終値だけを見るのではなく、
「どの銘柄が指数を動かしたのか」
「その動きは市場全体にも広がったのか」
「金利や為替も同じ方向を向いているのか」
まで確認する。
それが、今日のような相場を読み違えないための重要な手掛かりになります。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
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